2012Jユースカップ 第20回Jリーグユース選手権大会準決勝2試合は12月22日に行われた。
第1試合はガンバ大阪ユース対横浜F・マリノスユース。
ガンバユースは、#9出岡大輝をターゲットとしてタテに早いサッカーを仕掛ける。この攻撃に対し横浜FMユースは、CBの#3岩壁裕也と#13上野海の両選手が激しくぶつかり、簡単に仕事をさせる事がなかった。また横浜FMユースは#10田中智也を頂点とし、#11伊東海征、#7村原大輝、#14汰木康也が高い流動性を持って相手陣内をかき回し、攻撃の糸口を探った。
前半42分のガンバユースの先制点はオウンゴールだが、スピード感のある崩しによるもので、これはガンバユースの攻撃力を褒めるべきであろう。
対する横浜FMユースも、オフサイドにはなったが38分に左サイドを駆け上がった#2高野遼からの絶妙なクロスを#7村原大輝がゴールに流しこむという場面が見られた。また、前半ロスタイムの45+2分にも#10田中智也の左からのクロスをニアポストに飛び込んだ#18新里涼が頭で合わせるというチャンスがあった。
1点差で迎えた後半は、両チームとも守備意識を高めての試合となる。そんな中、ハーフタイムに松橋力蔵監督から「攻撃は徹底的に仕掛けていこう」と激を飛ばされた横浜FMユースが優位に試合を進め、チャンスも作る。しかし、シュートにつなげるところのプレーが少々雑で、ゴールを割る事ができなかった。
ガンバユースはシンプルにプレーするよう伝えられた後半を卒なくこなし、1点のリードを保ったまま試合終了のホイッスルを聞く事となった。
ちなみにガンバユースの梅津博徳監督が試合後に口にした「こんなチームにしたくなかった。もっと点をとれるチームにしたかった」との言葉が印象的だった。
第2試合はサンフレッチェ広島F.Cユースとコンサドーレ札幌U-18との一戦となる。
試合を見ていて感じたのは、共に早い攻撃が出ていたという点。特に広島ユースは#5平田惇の広い視野と展開力が素晴らしく、彼に生かされる形で前線の#9大谷真史を中心とした攻撃陣が札幌U18を攻め立てた。
一方の札幌U18で目立っていたのが、ロングシュートの多さである。特にボランチの#6堀米悠斗と#14前寛之が2列目で拾ったボールを放つ場面が目についた。この件については試合後に#10神田夢実「遠目からのシュートとか、崩し切れていないのに打つ場面が多かった」と振り返ったが、それは相手に対して脅威を与えるためのものでもあったと述べている。また神田は、だからこそ、もう一つ前に持ちだしてシュートを打つことをチームとして意識し、それができる技術が札幌U18にはあったと振り返っている。
0−0で折り返した後半も、激しい中盤での攻めぎあいによってシュートにまで持ち込めない時間が続き、両チーム共にゴールは決まらず。0−0のまま延長線へと突入する事となる。
無得点のまま突入した延長戦も渋い戦いになるのだろうと考えていたが、さにあらず。延長前半の95分に札幌U18が#9下田康太の得点で先制したことで一気に試合が動き始める。
この先制点の1分後に広島ユースが#24川辺駿のゴールで同点に追いつくが、札幌はテンションを下げることがなく、延長前半100分に#23藤井慎之輔が再度広島ユースを突き放したところで勝負は付いていたのかもしれない。
というのも試合の内容としては札幌U18が広島ユースを上回っており、1−1になった際のメンタリティに差があるように思えたからだ。例えば#9下田康太は「追いつかれても気持ちが折れずに、最後まで戦って勝てた」と同点の場面を振り返っている。その一方で、広島ユースの#10野津田岳人は同点になった際の心境を「1点取られて追いついた時に、体力がなかったというのもあるんですけど、そこで緩んじゃった部分を、心の中にみんなが持っていたと思う」と述べている。つまり札幌U18が「やり直しだ」と、改めて攻撃の意欲を燃やす一方、追いついた広島ユースは一息ついてしまった。だからこそ、広島ユースは2点目を決められた後の気持ちの立て直しに失敗。焦る気持ちばかりが前に行き、手薄な守備陣を破られて次々と追加点を奪われてしまったのである。
もちろん広島ユースが精神的に弱いとは言わない。ただ、彼らがこの試合において弱気にならざるを得なかった理由として、札幌U18の技術の高さがあったのは間違いないだろう。技術の高さは、それによるボール回しの上手さにつながり、それが相手の体力を徐々に奪うという側面がある。広島ユースは札幌U18のボール回しによりボディーブローを受け続けていたのである。そしてそれが延長後半の3失点となったのであろう。
守備と精神的なダメージを立て直せない広島ユースが、技術で上回る札幌U18に一方的にやられ続けた延長後半だったように思えた。
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