岡山劇場 声は届き、やがて力となる。
岡山一成 (著)
今でこそ試合日の等々力は、臨場感のある雰囲気を作り出せているが、その昔数千人がやっとの時代は閑散としたものだった。例えば99年に川崎はJ2優勝でJ1昇格を決めるのだが、その時のスタジアムは決して熱気に包まれていたわけではなかった。物見遊山で駆けつけた第三者が、J1昇格というイベントを見に来ていたというのがあの日のスタジアムを訪れた観客の真相だったように思う。
そんな川崎が、今の臨場感溢れる等々力を創りだす時に、深く関わっていたのが岡山一成だった。そして、川崎を地域に根ざすクラブへと成長させていった岡山が、サッカー人生の中で経験してきた出来事を、紹介しているのがこの本だ。
今日、日本各地で試合後の選手たちがトラメガ片手にサポーターと交流する姿が見られるが、そのはしりとなったのが岡山だった。まだ、選手とサポーターの間に「特別な存在の選手」と「応援させてもらっているサポーター」というような心理的な壁がある時代に、ビールケースとトラメガとでその壁を取り払う姿は物珍しく、そうしたマイクパフォーマンスの動画が凄まじい勢いで拡散していった過去を思い出す。この書籍には、そうしたサポーターとの交流を橋渡しした天野春果という稀代の天才プロデューサーもその影をちらつかせるが、天野氏の活動については彼の著作に詳しいので、気になる方は参照してみるといいと思う。
タイトルからしてバカ話ばかりかとおもいきや、仙台でのベガッ太くんとのエピソード、浦項での話。札幌でのコールリーダーとの交流。そして松田直樹さんとのエピソードなど、はうっかり電車内で読めないレベルの泣かせるものなので、注意が必要だ。
この本を読んで、岡山の事をずるいと思うのは、過去のクラブとの関係の中で、常に逃げていったと話している点。そうした自分の弱さを素直に書いているのである。ここまで自らの弱さをさらけ出した人を叩く人は居ない。ただ、読みたかったのはそんな弱さを克服した、もしくは克服しつつある今の彼である。本書を読むと、どうやら浦項時代にある程度燃え尽きたような印象を受けるが、彼には奈良クラブの一員として等々力でプレーしてもらわなければならない。だからこそ、彼には弱い自分を乗り切った、奈良クラブでの後日談を期待したいと思う。
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