長らく選手権の舞台から遠ざかっていた大分が、北陸を相手に10-0というスコアで勝利した。高校選手権36大会ぶりの二桁得点差勝利を実現した朴英雄監督は、自らのサッカーをフリーマンサッカーと名付け、チーム作りを進めてきたという。
では、フリーマンサッカーとは何なのか。朴監督によると、ボールがない局面の選手に走らせるスタイルのサッカーであるという。すなわち「ボールを奪ったらすぐにワイドに張って、横に開かせる。うちは奪った瞬間に散る。そのスピードが速い。ポゼッションではないです。裏に入れてね。奪ったら、足が早いのですぐにそこにいれる。そういうサッカーです」(朴監督)というスタイルなのだという。マイボールになった瞬間に前線の選手が広がり、スペースを突く動きをスタートさせるのである。
目新しい名前ではあるが、ロングボールを相手の最終ラインの裏に入れるサッカーで、オールドタイプのキックアンドラッシュのサッカーの亜流であると言えば理解してもらいやすいかもしれない。今時の流行りである、パスを主体としたサッカーとは対極にあるようなスタイルである。
大分の選手は高尾山(たかおやま)という階段と坂道とで構成された山道を1km5〜6分で走る通称山ランによって鍛えられており、局面での強さを実現している。素晴らしくいい内容で勝てたというよりも、とにかく北陸に走り勝ったという試合だった。試合終盤には、戦意を喪失したのか、北陸の選手が守備の局面でハイボールをバウンドさせて大分にボールを奪われるという場面が何度か続いた。前半に4−0というスコアになった時点で、精神的にはすでに難しい状況になっていたのであろう。
大分のサッカーが、今時のサッカーと比べて珍しいのは、キックアンドラッシュというスタイルにとどまらない。朴監督は試合中にとにかく選手たちに指示を出し続けるのである。06年ドイツ大会の日本代表の惨敗を反省し、言語技術を磨くことでピッチ上で選手たちに問題を解決させることを目指す今の日本サッカー界の方向性とは真逆にあるスタイルを取るのである。
この日ハットトリックを決めた岡部啓生選手は試合中に頻繁に飛んでくる監督からの指示について「1年生の時から言われ続けていて、最初はへこみましたが、最近は悪い言葉は聞き流すようにしています。サッカーに関する事、自分のためになることだけを聞くようにしています」と話す。選手たちもそうした朴監督の試合中のスタイルに順応し、深く思い悩まないようにしているわけである。
ただ、さすがにそうした朴監督のスタイルは今時の若者には合わないようで、朴監督曰く大分県内では2番目から2.5番目の選手しか集められないのだと悩みを打ち明ける。ただ、そうした選手たちも、あのキックアンドラッシュによって実現されるパワーサッカーによってパスサッカーを打ち破り県予選を突破してきた。そういう意味では、ACLで韓国勢に勝ち切れないJリーグ勢との対比という領域で示唆的である。
10点を取れた事と、いいサッカーであるというのは、大分に関してはリンクしていない。とにかく力で相手を押し切るサッカーである。そうした国見の再来のような前時代的なサッカーが、今時のスタイルのサッカーを打ち破る姿を見るのは、それはそれで面白い物なのかもしれない。
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