川崎市内に北京という焼肉屋がある。何度かチーム関係者に連れていってもらったことがあるのだが、ぶっきらぼうな接客や飾りっけのない内装からは想像できないほどの肉を出してくれる名店である。うますぎて思わず腹一杯に食べてしまうのだが、食後に問題がある。肉がこってりしており、1ヶ月くらいは肉はもういいや、という気持ちになるのである。もちろんそうした思いは時間が解決してくれるので、懲りずにまた行きたくなるのだが。
ガッツリと肉を食べるとどれだけ高級な肉であろうとも脂に当たるのだとの認識を持ったのはこの店の味を覚えたからである。そしてだからこそ、驚かされた。宮崎牛のうまさにである。
川崎は毎年宮崎でシーズン前のキャンプを行っている。その取材のため毎年宮崎に短期間出張するのだが、そこで一軒の焼肉屋に出会った。ハナが利き、舌が肥えた新聞記者が彼らの足で探し当てたその店の肉は驚きのレベルだった。それは伽耶という焼肉屋だった。
焼肉屋の王道というと、カルビかロースになるのだろうか。だから初めて訪れたときもカルビの注文はあるものと思っていた。ところがその新聞記者は「カルビは濃いからロースで十分」と話すのである。その真意は肉がくればわかるのだろう思いつつ、注文から数分後。我々の目の前に供された肉は見た目にも極上な肉に思えた。
焼きすぎに注意しつつ、食すと、これが柔らかくロースながらも濃厚な肉汁が滲み出てくる素晴らしい肉だった。某有名チェーン店のエース級店舗ではおそらく倍以上の値段をとるのだろうと思われる肉が、リーズナブルに供されるのである。その味と値段のアンバランスに興奮しつつ、次から次へと注文し、ハシを進めた。
場に居合わせた全員が満腹感を少々オーバーするくらいにまで食べて晩餐は終了するのだが、驚くべきは食後の胃袋の軽さである。翌日でもすぐに再訪したいと思えるのである。前述の北京では、満腹にまで食すると、1ヶ月の強制的な肉絶ち感に襲われるのとは大違いなのである。
お店の雰囲気も、店員さんの控えめさも、そして味と値段を勘案したコストパフォーマンスでもこれまでの人生の中で訪れてきた全ての焼肉店に勝る味を実現していたのは、もちろんお店の頑張りがあって、そして彼らの誇りを満たす宮崎牛と言うブランド牛があったからだろうと勝手に思っている。
だからこそ、今回の口蹄疫の被害が心配でならない。畜産農家の苦労はもちろんのこと、その牛肉を提供する末端の店舗への影響が心配でならない。
こんな事を考えるのは、もしかしたら変な感情なのかもしれない。ただ、うまいものを納得の価格で食べさせてくれる店舗に対し、感謝の気持ちを持つことに日本人の多くは同意してくれるはず。ぼくは食後に、お店の人に「ごちそうさま。ありがとう」と言えることが幸せだと思っている。当然の対価を支払っていてもだ。
そんな、食に対する謙虚な感謝の気持ちを持たせてくれた店舗が危機に陥っている。そして肉そのものが、危機に瀕している。それも人災とも言える不作為ででだ。もっと早くに対応できたはずじゃないのかと。だから今回の口蹄疫の問題に関しては、早くから気にかけていた。対応の権限を持つ赤松大臣の外遊という事実と、マスメディアの驚くべき無関心さと、現場での被害の拡大とのギャップとをリアルタイムで追いかけながら、この恐るべき状況はなんなのだろうかと思っていた。なんで政府は農家を見殺しにするのだろうかと、思っていた。政治家が、その職務を放棄している現状が許せなかった。
事ここに至り、ようやく政府は彼らの権限により、重い腰を上げた。しかし、そうした対応をこの段階でとるのであれば、もっと早くに同等の権限を行使して、封じ込めたはず。そうすれば、ここまで被害は広がらなかったのではないのかと、そう思う。いずれにしても宮崎のあの素晴らしい肉牛は甚大な被害を被った。そこからの再生の道のりは長く果てしないと思う。だからこそ、出来る事は手伝いたいと思うのである。
みなさんの力で、宮崎県の畜産農家を助けて下さい。助力の一翼を担って下さい。お願いします。
宮崎県口蹄疫被害義援金
http://volunteer.yahoo.co.jp/donation/detail/341007/index.html
川崎フットボールアディクト創刊のお知らせ
ご存知の方も多いかとは思いますが、JsGOALが1月末をもって更新を終了し、新サイトの方に統合される事となりました。
Jリーグの取材情報を記事として公開する場として、本当にお世話になってきました。
JsGOALには感謝の気持ちしか無いのですが、そのJsGOALもホームゲームのみの取り扱いということで情報の半分は出せないという状況があったため前から川崎フロンターレ専用のニュースサイトを立ち上げようとは考えていました。
今回、いろんなタイミングが一致して、Webマガジンという形で、サイトを立ち上げる事になりました。声をかけていただき、クラブ側にも理解していただき了解をもらえました。掛け持ちもOKだと言われていたJsGOALの統合による運用の停止は想定外でしたが、そんな動きの中でできたのが川崎フットボールアディクトというサイトになります。
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