Jクラブ強化論 ぱる出版 田中直希 著
Jクラブにおいて、チーム編成の重要性については御存知の通り。
現場の現状を分析し、クラブの予算の枠内で選手年俸を決定し、補強ポイントを特定して移籍交渉を行う。サッカーに対する深い理解はもちろん、数字を読み込む能力も必要で、複雑な分析を経てチーム編成を完結させる。
まさにクラブの中枢とも言えるセクションが強化部と言えるが、この本は、この部署を司る複数の現職、元職の強化担当者や代理人に取材し、それをまとめたもの。
強化部の仕事の複雑さは、前述の通りだが、だからこそ強化担当者には深い人生経験が必要となる。そういう意味で、この本には、複数の強化担当者が運営を担当した経験を持つという事実が書かれていて興味深い。
たとえば、現FC東京強化部長の立石敬之氏は、彼自身が大分時代に運営を担当していた際、共に顔を合わせていた人物として札幌の三上大勝氏、仙台の丹治祥庸氏、川崎Fの庄子春男氏などの名前を上げている。また、現水戸ホーリーホックの鈴木徳彦強化部長もFC東京時代には運営を担当していたと振り返っている。
お金とサッカーと関係者との連携とを同時に満たさなければならない部署が強化部であり、そうした複雑な連立方程式を解ける人物を育成するための方法論として、現場以外の部署を経験させるというやり方が一般的に行われていたという事だろう。
複数の強化担当者が辿ってきたキャリアを、同じように経験してきた立石敬之氏の話で面白かったのが、選手とともにキャリアパス(経験の積み重ね)を描き、選手にアドバイスを与えて共有することを行なっているという下り。そして「長友のような日本人の心を持った選手、メイドインジャパンを送り出す」ことにこそ、大事なことが詰まっているのだと力説している点だ。目の前のFC東京というクラブはもちろん大事だが、それ以上に選手のキャリアを大事にする姿勢がそこからは見て取れる。
立石敬之氏を始めとする強化担当者の言葉を通じ、彼らが強化とどのように向き合っているのか。強化をどう捉えているのかが記された一冊となっている。強化部の仕事の現場で辣腕を振るう担当者の人物に迫る一冊といえる。
登場人物
浦和レッズ・山道守彦強化本部長
FC東京・立石敬之強化部長
G大阪・梶居勝志強化本部長
甲府・佐久間悟GM
柏・小見幸隆元強化本部統括ダイレクター
水戸・鈴木徳彦強化部長
名古屋・久米一正GM
代理人・稲川朝弘FIFA公認代理人
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