内田篤人の「立ち上がりガッツリいけたのは、向こうが中2日だったからというのはあるかもしれません」という分析が、この試合を一つの側面から評価したものであるのは間違いない。日本代表の方がイタリア代表に比べ1日多く休息できていたという事実は、両チームの運動量に大きな相違をもたらしていた。そんなイタリアにつけ込んだ日本代表の攻撃は見事だった。立ち上がりから試合をコントロールした。
ベンチから戦況を見守った中村憲剛は「立ち上がりに関しては完全にイタリアを凌駕していた」と日本の戦いを振り返り、「まとまってチームとして力を出せば日本はこれくらいはやれる」と言葉をつなげた。いい戦いまではする日本代表が、PKではあったが、本田圭佑のゴールによって先制。CKの流れから香川真司が決めて2点を先行するまさかの展開に持ち込む。
まさに、まさか。戦前は日本代表の不利な戦いが予想されていただけに、この2点差のリードに取材中のぼくも戸惑った。居心地の悪さを感じた。
序盤からの一方的な日本ペースの試合を元に、このまま勝てそうだ、勝たなければならないという思いに駆られる一方、これだけの展開には何か裏があるのではないかと疑心暗鬼にもなった。一抹の不安は、ハーフタイムを迎える前半終盤のイタリアの攻勢として実現した。そして、CKから失点。脳裏には川崎Fで見てきた最悪の場面が浮かんでいた。
2点差を1点差にされたハーフタイムについて内田篤人は「監督がハーフタイムに、後半の最初の10分で試合が決まる」との指示があったと述べている。もちろん、選手たちもそれは十分に理解していた。たとえば川島永嗣は「(後半の頭からイタリアが来るということについて選手同士で)話もしてました」と選手間で行われた話し合いについて述べている。ただ、監督からの指示や、選手間で気持ちを引き締めながらもイタリアの攻撃を素直に受けてしまったのは間違いない。「結果的にああいう形で点を取られてしまった」と肩を落とす川島永嗣は、「もうちょっと自分たち自身が落ち着ければよかったなと思います」と悔しさを噛み締めていた。
この試合にはいくつかのターニングポイントがあった。たとえば2点をリードした後の戦いはその一つだが、特に重要だったのが後半の立ち上がりだった。あの立ち上がりの2失点が無ければ、後半もイタリアを押し込んだ戦いぶりを思い出すにつけ、世界大会の舞台での大番狂わせの可能性は高かった。
金星を逃した日本ではあったが「勝てそうだ」と「勝つ」との間の壁は高かった。この壁を超えるには、失点につながった単純なミスを1つずつ潰していくしか無い。イタリア戦を「善戦だった」と評価するのは危険ではあるが、チームとしての方向性は間違っていない。日本のサッカーファンがタヒチ代表を応援するのと同様、ブラジル人サッカーファンがイタリア戦において日本代表に投げかけた応援の声に判官贔屓の意味合いがこもっていたのは間違いない。ただ、それにしても2点をリードした前半35分頃に沸き起こった日本代表チームへの声援には日本代表のサッカーに対する賞賛が含まれていた。代表が進んでいる道は大きく誤っている訳ではない。ここからの1年は、試合内容の振幅の幅をいかに少なくし、そしてその谷をどこまで底上げできるのかが問われてくる。2試合で7失点した厳然たる事実を踏まえ、新たな人材の発掘にも取り組むべきだろう。
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