CBの田代真一はこの試合を迎えるにあたり、「ピリピリした雰囲気がありました」と話す。というのも10月21日の39節の愛媛戦は4失点しての大敗で、J2残留に向け追い込まれていたからだ。そうした空気を察知したのか、オズワルド アルディレス監督は岐阜戦を前にした練習中に選手たちに「スマイル・スマイル」と声を掛け、練習の雰囲気を和らげようとしていたという。
ピリピリとした空気の中で準備を進めた町田と同様か、それ以上に岐阜も怖さの中で試合を迎えていた。岐阜を率いる行徳浩二監督は「町田も負けたら終わりだというところで、大変なプレッシャーがあったと思います」と話しつつ「ただ、それ以上に(岐阜に)消極的なプレーがありました。ボールを受けるのが怖い。受けると逃げ場を探すという印象がありました」と自らのチームの選手たちの印象を口にしていた。プロの選手をして、そうした心理に追い込む舞台がサッカー選手としてのキャリアの中で、そうそうできない経験であるのは間違いない。だからこそ服部年宏は「どういう形でもこれをいい経験にできるようにしたい」と話すのである。
JFLは、J2加入のためのクラブライセンスを条件付きで取得したV・ファーレン長崎が首位の座を維持している。彼らが残り3試合のJFLを首位のまま終えたとすると、J2最下位のチームとは自動での昇降格が行われることとなる。町田が最下位でシーズンを終える事になると、苦労して昇格したJ2を1年で追われる事になるし、岐阜が落ちるとすればチームが消滅するようなインパクトになるだろう。その一方で、長崎にとっては悲願のJ2昇格となる。JFLで戦っていることもあり、彼らの肉声はほとんど伝わってこないが、地元の盛り上がりはかなりのものだろう。そうした悲喜こもごもの感情もJ2の残り2試合で決定する。
繰り返しになるが、フットボーラーとしてそうした舞台での戦いはそうそう経験できるものではない。今の境遇をそうやって、前向きに捉えることができるかどうか。平常心でプレーできるかどうかがクラブの未来を決める事となる。
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