優勝を手にしかけていた後半ロスタイムに喫した同点ゴールをはね返せず。延長に逆転されて準優勝に終わった四中工の樋口士郎監督の試合後の監督会見です。
バルセロのCWCでのサントス戦を引き合いに出し「バルサの凄いところはあのメンバーであのパス回しであのプレスができるという事。そのあたりに目を向けていかないと」と、華麗なパス回しだけでなく、猛烈な守備にも眼を向けるべきだというコメントはおっしゃるとおりだと思います。
ちなみに樋口士郎監督は、今季から横浜FMの監督に就任した樋口靖洋監督の実兄で、会見でもその件について触れています。
◯樋口士郎監督(四日市中央工業)
今日のゲームは國吉(祐介)というアンカーの心臓になる部分の選手が居ないという事で、どうしようかなと思って色々と考えていたんですが、攻撃陣の良さを出すためにそのままのシステムで生川(雄大)という選手を入れて、その彼が非常に頑張ってくれたと思います。穴を全然感じさせずにボール奪取、それから奪ってからのサイドチェンジだったり。前半に関しては、予想以上のサッカーができたのかなと。ただ、やはり市船さんのフィジカルの強さと、交代で出てくる選手の能力の高さ。そういう部分で最後、こらえきれず失点してしまいました。ですが、我々四中工としては非常に良いサッカーといいますか、自分たちのやろうとした精一杯のプレーをやってくれたんじゃないかと思っています。
Q:中盤でのバランスで、後半は二人が並んでディフェンスとの間が空いてしまい、フリーにさせてしまっていたように見えましたが、その点について教えて下さい。
A:ハーフタイムに話したのは、ボールを保持する時間を長くしたいということだったんですが、なかなか相手の圧力、プレッシャーが強く、結局奪った後にも起点がなかなか出来ず、全体のライン、中盤のラインも引いてしまったのかなと、いう感じでした。
Q:これまで20年近く監督をやられていて、今年と同じくらい強いチームはあったと思いますが、今年特有の強さはどこら辺だったのでしょうか?
A:ぼくが監督させていただいて、野洲高校に負けたチームとか、国見に負けたチームというのは、ひょっとしたらこのチームよりも良かったのかなと思いますが、違いは点を取る部分ですね。攻撃のところのバリエーションは今年のチームはたくさんあったのかなと。サイドを起点にしながらサイドバックがオーバーラップして厚みを持たせることも出来ますし、2トップの二人のコンビネーションでも行ける、という部分もある。バイタルから点を取るところに掛けては今年のチームの大きな特徴だったと思います。
Q:時間が経つに連れて相手の良さが出てきた。パスをつないでも、最後はフィジカルでやられてしまう。自分たちが持っていないもの、市船が持っていたものを評価するのか、それとも四日市がやろうとした事をもっとベースを上げようと思っているのか、どうでしょうか?
A:両方なんですよね。やっぱり大げさな話になりますが、高校サッカーというこれだけの環境の中でやらせてもらって、選手は幸せだと思います。ぼくら指導者もその中で質を上げないと絶対にダメだという意識は高校サッカーの指導者はたくさん持っていると思います。その質を上げていく部分は追求していくんですが、その中でハードワークの部分であるとか、世界の球際の部分であるとか、そういうベースの上で質を上げるというんですかね。難しいと思いますが、うちらの選手にも当然止めて蹴る、見るという部分のアプローチはしっかりしていかなければならないんですが、でもこういうサッカーもあるんですね。フィジカルのサッカーも。そこに対抗していくためにたくましさの部分というのが要求はしていかなければならないかなと。でも自分たちの特徴を活かすためには、今年のチームであればフィジカル的な部分よりは技術的な部分の良さを出させてあげたいということなんです。でも、球際頑張れ、ハードワークしろ、という要求は強く持っていかなければならないと思います。
Q:決勝点ですが、延長後半になって全体でラインを押し上げて攻めました。それでディフェンスブロックがラインだけになって点を取られた。そこについての決断はどういうことだったのでしょうか。
A:延長に入った時に選手に話をしたのは、もう一度自分たちの前半の良かった時の事を思い出して、徹底的につなげと。サイドできっちり起点を作りながら奪ったあと、厚みを持って行って、という事をやろうとしましたので、逆にそれでカウンターを食らって失点したというのは、ある意味仕方ないのかなと。あのまま守りに入ってPK狙いとかっていうのは、考えなかったですし、そういう形にしていたらもっと早くにやられていたのかなと思います。
Q:精神的に選手にはつらい展開だったのかなと思いますが、國吉くんに変わってゲームキャプテンを務めた西脇(崇司)くんの貢献について。
A:西脇だけでなく、チームメイト全員が國吉の穴を埋めようという意識を高く持っていましたので、西脇は当然頑張ってくれましたが、試合に出ていた全員が強い気持ちを持っていてくれてたと思っています。
Q:高校生年代の守備力についてどうお考えでしょうか?
A:これも偉そうな話になりますが、バルサのパスサッカーということがすごく言われていますよね。そういう見本がある中でそれを指向するということはある。で、育成年代の高校のチームはそういうチームがたくさん生まれていると。ただ、このまえトヨタカップで感じたサントスとバルサの試合で、当然バルサのパス回しは凄いと思いますが何が一番すごいかというと、ブラジルのトップチームのサントスのパスが3本、4本通らないということです。これはぼくにとってすごく衝撃的でした。南米のチームですから、ある程度、ボールを保持しながら、バルサもボールを保持しながらお互いにいい所が出るのかなと思ったんですが、バルサの凄いところはあのメンバーであのパス回しであのプレスができるという事。そのあたりに目を向けていかないと、先ほどのハードワークのところと同じなんですが、パスサッカー、パスサッカーと言いながら、ゆるい状況の中でトレーニングとか試合が行われて行くようであれば世界を考えた時に難しい部分もあるのかなと。ハードワークをベースにした、高い守備意識を持ちながら、ボールがきちっと動くサッカーを指向していく事が高校サッカーにとっても大事なのかなと思います。
Q:高校3年の時に立たれた国立の舞台と、今日監督として立たれた舞台とで違いはどうでしたか?
A:ぼくらの高校時代にはまさか決勝に行くとは思っていないような時代でしたので、伸び伸びやっていたという気持ちでした。指導者として気をつけたのは、自分たちが伸び伸びできたということがありましたので、選手たちに自分たちの良さを出させてあげたいなと。そういう気持ちで昨日、一昨日、今日と思っていました。選手に伸び伸びとええところを出せると。そういう気持ちです。
Q:来季に向けてどう作っていきますか?
A:たくさんのメンバーが残るんですが、では来年これでいいかというと、決してそうではないという経験はずっとしてきています。やはり今年のチームの1〜2年生の前の選手の良さを出すのは國吉の守備力であったり、西脇のCBの3年生の精神的な部分とか、守備的な戦術的な要素があったと思うんですね。ですからこの1〜2年生については技術的な部分はもちろん伸ばしていかなければなりませんが、やはり先ほど言いました、もっともっとハードワークできるように、苦しい時に自分たちでチームを変えていけるように、という技術的な部分、プラスアルファのメンタル的なところとか、彼らにとっては嫌なことだと思うんですが、そういうところのベースを上げていかなければならないと思っています。
Q:四中工の準決勝、決勝の試合を見る中で、ユースに選手が流れているという流れの中で、これだけのサッカーが出来るのは、高体連とか高校サッカーも捨てたものではないと思う大会でした。そういう中で、育成の話や指導者についての話があれば教えて下さい。
A:偉そうな話なんですが、先程言わしていただいた、バルサという理想的なサッカーがある。でも、その本質というのが上辺だけのポンポンパスが回るだけの、それが凄いのではなく、あのトップクラスの選手たちが次から次にポジションを取る。相手ボールになった瞬間にボールを追いかける。それが連動していく。そういう…、ですから高体連も、どっちかというとハードワークやメンタル面とかと強調されがちですが、高体連はもっと質を上げていかなければならないと思いますし、Jユースのチームはボールはしっかり動きますが球際の問題であるとか、苦しい時に頑張るところとか、ぎりぎりのシビアな所での勝負強さとか、お互いにウィークポイントを補っていくというアプローチをしていくことが大事かなと。ぼくたちは目の前の選手たちがいかに高校を卒業してた後につながっていくのかということを、考えながら指導させてもらっているつもりなんですが。
ですから大学に行ってから、四中工の選手がたくさん活躍しているねとか、Jリーグに行ってるねとか、ワールドカップに出ているねとか、そういうものを、高校選手権で勝つことももちろん素晴らしいことなんですが、そこの所がなく、高校選手権だけというのは僕らの立場としてはアカンなと思います。
Q:現場の監督としてはそういうところをもう少し評価して欲しいということはありますか?勝った負けたでしか評価されていないという状況がありますが。
A:ぜひ、宣伝していただければと思います。結構多いんですよ。四中工から大学1年生でレギュラーになっている選手も多いですし、大学経由、Jリーガー。ワールドカップにも2人出いていますし、うちの弟が今度マリノスの監督になりますので、四中工からトップクラスの選手も出ていますし、指導者もホントに沢山でているんですね。四中工の3年間で、高校選手権以降の部分というのも評価いていただければ嬉しいです。
Q:今日この舞台に立てたのもPKの強さがあったかと思いますが、秘訣があれば。
A:PKの練習は、スポットから1m遠いところから蹴らせています。これはずっと昔からやっているんですが、本番になったら近いよという。そういう対策はしていますが、なんなんでしょうね。高校選手権は短期決戦ですので、流れに乗ったなと。それは僕らにも訳のわからないような風が吹いたという、そういう印象でした。
Q:このあと選手にかけたい言葉は?
A:選手には感謝の気持ちしかないですね。本当にこのメンバーで国立競技場で、ぼくらにしてはええサッカーができたという感触がありましたので。出せるものをすべて出してくれたと。ホントに褒めてあげたいと。そういう気持ちです。
Q:同点ゴールを食らった瞬間に考えていたことは?短く、正直に、教えていただければ。
A:CKが続いていましたので、やっぱりやられたというのが正直なところですね。ただ、延長があるなというのがあったので、延長に向けてどういう指示をせなアカンのかなというのは考えました。
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