試合を見ていて感じたことの1つとして、東海大五の守備面での不安が挙げられる。久我山が回す中盤のボールに対しどうにかして囲い込もうとするのだが、思うように奪えない。さらにはその動きの裏を取られ、ピンチを作ってもいた。これでは厳しいと感じていた。
これについては試合後に聞いた幾つかの言葉によって納得できた部分もある。その1つが久我山の中盤の構成力の高さである。そもそもバルセロナのサッカーを目指しているという久我山は、中盤のパスワークに自信を持っていた。例えば久我山の李済華監督は「サッカーは全て中盤にある」と試合後に発言し、実際に「ためをつくるタレントを置く」(李監督)という選手起用を実践していた。
久我山の中盤については東海大五のCBの一角である福島康太選手が「相手は回すのが上手いので、飛び込まないようにしていました。中盤が上手かったです。相手の7番とかすごい。あれはすごい。7番と10番は相手ながらすごかったです」と敵である事を抜きにして、率直に脱帽する旨のコメントを残している。つまり東海大五の守備陣にとって、久我山の攻撃を封じ込めるのはそもそも難しいタスクだったのである。
また、東海大五は前半29分と36分とに、高いラインの裏を取られ、GKとの1対1を作られていた。この件について東海大五の福島康太選手は「今日は声が通らなくてやりにくかったです。予想以上に通りませんでした」とピッチレベルでの修正の難しさを口にしている。そもそも東海大五が維持したラインの高さは普段からのものだとの事。であるがゆえにそのやり方を大幅に変更する事はプランとしてはなかった。結果として裏を取ろうとする相手に対し「サイドバックが付いていくのか、ラインでコントロールするのか」(福島選手)という対応で乗り切ろうとしていたという。しかし、69分の決勝点は彼らの準備を上回る個の力によって奪われてしまう。
斜めの動き、いわゆるダイアゴナルランを見せた右高静真選手は、ボールを持つ白瀧秀斗選手と目が合ったという。
「ルックアップした時に白瀧(秀斗)がこっちを見ていた。アイコンタクトが取れました」
狙い通りのパスを引き出した右高選手がまず考えたのがファーストタッチの大事さだった。
「あれはファーストタッチが大事だと思い、意識しました。DFが右から来ていたので、そこに置くとスライディングされると思い、遠い方にボールを置きました」
相手に突っかけられない場所にボールを置いた右高選手は、そのまま快足を飛ばしてスペースを駆け抜け、そしてゴールを決める。ハーフタイムに限らず試合中にも「相手は前には強いが、裏には弱いのかな」と話し合っていたという久我山は、その弱みを付くプレーで試合を決めるのである。
共に組織的な戦いを見せていた両チームの対戦は、個の力と組織力とをうまく融合させた久我山が必然性を持って勝利した。この2チームがこのタイミングで対戦するのが惜しいような、そんな試合だった。
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