江橋 よしのり著 小学館
後書きに記された筆者のなでしこジャパンへの思いを知って、思わず泣いてしまいました。本書は、取材力となでしこジャパンへの愛情を感じさせる内容ではありましたが、最後の最後にああいう原稿がくるとは予想外でした。
この本は長年に渡りなでしこを取材してきた一人のジャーナリストの戦いの記録です。W杯の各試合の詳細なレポートが過去のエピソードと共に描写されて行く展開は見事です。
ドイツから帰国したなでしこジャパンの選手たちは、まさに連日テレビへと露出し続けました。おそらくは、なでしこジャパン結成からの報道量を、この数カ月で凌駕していたはずです。そんな異常な状況の中、なでしこジャパンのサイトストーリーには食傷気味の皆さんや、なでしこのサッカーの根底にあるものを知りたい人はもちろん、サッカーに興味がない人にもぜひ読んでもらいたい記録となっています。
個人的には、帰国後、ほとんど表に出ることのなかった宮間あやのエピソードが豊富に盛り込まれていて、正直な話、嬉しかったです。
読んでいる最中に気になってメモしていた項目
「福島での勤務経験が、這い上がるためのきっかけを与えてくれる」
丸山桂里奈
延長開始直後に澤を蹴り上げて、後悔の涙を流す
ジモーネ、ラヴデア
「朝、目が覚めた時、もしその日一番やりたいことがサッカーじゃなかったら、私はその日に引退する」
宮間あや
ちなみにこの宮間の発言は、有名なスティーブ・ジョブズのスタンフォード大での式辞の中に出てくる一節に似通っている所がありますね。ジョブズは日本出身の禅僧である乙川弘文氏(故人)と出会い、影響を受けている事が知られています。そんな禅の中にある自力本願、つまり自己責任の発想が強く出ているのが、以下の一節です。
「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳
私は17歳のときに「毎日をそれが人生最後の一日だと思って生きれば、その通りになる」という言葉にどこかで出合ったのです。それは印象に残る言葉で、その日を境に33年間、私は毎朝、鏡に映る自分に問いかけるようにしているのです。「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか」と。「違う」という答えが何日も続くようなら、ちょっと生き方を見直せということです。
やりたいこと(サッカー)をやりたいと思えなかったら引退→宮間あや
今日やるべきことが、自分のやりたいことではなかったら、人生が違う→スティーブ・ジョブズ
「やりたいこと」に到達する道順が前後で違うだけで、二人の天才が同じような発想をしているのは面白いですね。
思わず写真に撮ってしまった、決勝戦の2点目の場面を詳細に記したパート。
いずれにしても、素晴らしい本でした。なでしこジャパンW杯優勝の舞台裏を、サッカーの側面から掘り下げたレポートを欲している方はぜひご一読を。
そして、この本と著者に正当な評価が与えられますように。この本を評価できるほどに日本のサッカーが進歩していますように。
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