情熱を貫く 亡き父との、不屈のサッカー人生 大久保嘉人
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共に1400円+税 朝日新聞出版
移籍直後の大久保嘉人に対し、どんな記者対応をする選手なのかと思っていた2013年のシーズン初頭のこと。クラブハウスにある記者席で選手の帰りを待っていると、自然体の大久保がやってきて気さくに話し始めた。
大久保とは代表でしか接点のなかったぼくは、大久保が呼び止められれば止まり、誰にでも話す選手だった事は知っていたが、そのときの印象そのままの気さくさを持って川崎の一員となっていたことに驚かされた。
それ以降、問われれば答える取材対応は変わらず。時にざっくばらんに思った事を口にして、こちらが自主規制するような、そんなおおらかさを持つ選手だった。
この本は、そんな大久保嘉人の人格がそのまま現れた一冊となっている。
涙なしには読めない父親への思いを綴った冒頭に始まり、極度に困窮していた子供時代の話。それでも両親は、大久保に夢を託し、その夢を引き受けて歯を食いしばる国見町時代のエピソード。
肝臓を悪くした父親が、闘病の中で精神を病んでいく過程。そして、檻付きの精神病院に入れられたその姿にショックを受ける大久保。
通常、秘匿したい事実のはずの身内の病歴までも赤裸々に記す大久保の自身にも、オーバートレーニング症候群を発症した過去があるのだとの告白を読むに至り、その事実にただただ驚かされた。
そして確信した。
困窮家庭で育った大久保が、サッカーだけで這い上がり、サッカー界に確固たる地位を築く。そうやって身一つで成し遂げてきたその誇りが、隠すべきことなど無いとばかりの取材対応に表れ、そしてこの本が生まれることとなったという事を。
とにかく、描かれた現実が気になり、読むスピードを緩めることが出来なかった。そして、時に苦笑いし、そして涙する一冊である。
2014年の神戸との開幕戦では、選手紹介時に神戸サポーターから盛大なブーイングを受けていた大久保だが、試合後にはそのサポーターのもとに駆け寄り、そして声をかける姿があった。セレッソサポーターからも愛される大久保は、ピッチの上だけを見ていてはわからない人間臭さを持つ選手である。そんな大久保を深く知るには最適の一冊なのだと思う。
個人的には、自立というテーマでも読めた一冊だった。幼くして親元を離れたことが、今の大久保の根幹を作っているのは間違いない。
ちなみに冒頭から泣けるので、うっかり電車で読むと、大変なことになるので注意が必要だ。
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