川崎フットボールアディクト創刊のお知らせ

ご存知の方も多いかとは思いますが、JsGOALが1月末をもって更新を終了し、新サイトの方に統合される事となりました。
Jリーグの取材情報を記事として公開する場として、本当にお世話になってきました。

JsGOALには感謝の気持ちしか無いのですが、そのJsGOALもホームゲームのみの取り扱いということで情報の半分は出せないという状況があったため前から川崎フロンターレ専用のニュースサイトを立ち上げようとは考えていました。

今回、いろんなタイミングが一致して、Webマガジンという形で、サイトを立ち上げる事になりました。声をかけていただき、クラブ側にも理解していただき了解をもらえました。掛け持ちもOKだと言われていたJsGOALの統合による運用の停止は想定外でしたが、そんな動きの中でできたのが川崎フットボールアディクトというサイトになります。


JFAはJリーグの監督として指揮をとれるS級を始めとし、A、B、C、D級のライセンスを認定している。これらのライセンスのうち、S級は2年間で。A、B、C級の各ライセンス保有者は4年間のうちに40ポイントのリフレッシュポイントを取得しなければならない。詳しくはこちら→リフレッシュ研修会

このポイントはJFAなどが開講するリフレッシュ研修会などに参加することで取得できるもので、一度に取得できるポイントは5ポイントから40ポイントとなっている。

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ということで、前口上はここまでにして、今回JFAが開講したフットサルを題材にしたリフレッシュ研修会に参加しました。ちなみにJFAはフットサルに関してもそれ専用のライセンスを認定しているのですが、この講座はフットサルのライセンス保有者に限らず参加が可能でした。ただし、基本的に登録が失効したフットサル指導者の救済のための講座であり、定員をオーバーした場合はフットサル指導者を優先させ、かつ抽選で受講が決まるというルールでした。

ということで、受講できるとのメールを頂き、受講したので報告します。

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■講師

フットサル日本代表のミゲル・ロドリゴ監督

■時間

予定では、1時間半。実際は2時間ほど

■内容

フットサル日本代表監督が語る講座だということもあり、フットサルの技術論を語るのだろうと思っていましたが、全く方向性は違っていました。講座の冒頭でミゲルさんが語ったこの講座の位置づけは以下の通り

フットサルの、サッカー選手育成における有効性
フットサルが日本サッカーの課題をどう克服できるのか

いきなり興味を持たせてくれる展開です。フットサルと日本サッカーの課題の克服とがどう結びつくのでしょうか。

・フットサルの広がり

「フットサルはスペイン、ポルトガル、ブラジル、アルゼンチンなどなどで行われています。そういう事を知ることは大事です」

つまり世界のサッカー強豪国でフットサルは行われているのだという前提ですね。

そして問いかけられたのが以下の点です。

日本サッカーの3つ課題とは何でしょうか?

このエントリーを読んでいるみなさんも考えてみてください。

ちなみに個人的に以下の3つではないかと考えました。

・江藤が考える日本サッカーの3つの課題

1 メンタル

2 体格

3 技術

1のメンタルについては、これが一番大きいのかなと思っています。特に風間監督の指導を間近に見るにつけ、技術を発揮するためのメンタル的な安定の重要性を感じています。どれだけうまい選手であろうとも、メンタルが弱ければ大一番で緊張し、自分の良さを全く発揮できないこともありうるからです。

2の体格は、これは日本人であることの宿命のようなもので、これをどう克服するのかが課題であろうと思ってきました。

技術を3番目に持ってきたのは、日本人選手の技術は十分に高いという前提があります。欧州でのプレーを経験した複数の選手の話にもありますが、日本人選手の技術は高い。ただ、まだまだ世界一流の選手に近づくための努力は必要であろうと。そういう意味で、技術を3番目の課題として考えました。

これに対し、ミゲルさんは受講生に質問をしながら彼が考える日本サッカーにおける3つの課題を上げていきます。

それが以下のものです。

1 決定力

2 1対1での強さ。フェイントや高いスピードの中での技術を含む

3 KETSUDAN(決断力)
これは効率的に、効果的にプレーの中で行う必要がある

これらはフットサルとはなんぞや、という問いの答えであり、日本サッカーの問題点でもあります。つまりフットサルそのものなのです

■フットボールの木

フットサルの狭いピッチでのプレーは、これらの課題を解決しながらのものになります。つまりフットサルによってサッカーの技術を養うことができるのだという話です。

ここでミゲルさんは「フットボールの木」というものを描きます。

根っこがあり、土があり、幹があって上部でそれが二股に分かれています。

この「フットボールの木」の根っこに近い部分を区切り、「5〜9歳」の年代とします。そしてフットサルはこの頃に行うべきだと説きます。

そして「11〜12歳までが7〜8人制サッカーの年代だ」と。

「子どもによっては、上の年代に飛び級する子も出てくる。だからフットサルと7〜8人制サッカーの両方を行う子も出てくる」

フットサルから7〜8人制サッカーを経由し、いわゆるサッカーへと移行する。その過程で、80%の選手はいわゆるサッカーをプレーし、20%程度がフットサルを継続させるのだという説明がありました。

■なぜフットサルなのか

「Dan Coyleさんという学者さんが、サッカーの強さを調べるためにブラジルに行き、調査。そして結論として上げたのが『パッションとフットサル』でした」

パッションはわかるにせよ、フットサルとはどういうことでしょうか。

「Dan Coyleさんが調査した結果、子どもが同じ時間プレーした場合、サッカーと比べてフットサルは600%(6倍)も多くボールを触っている

という事です。ここでミゲルさんは「6〜12歳の子どもたちは神経系が発達するゴールデンエイジである」と述べます。だからこそ、選手が幼いころはフットサルをプレーさせるべきだというわけです。

ゴールデンエイジの子どもに対し、ボールタッチを増やすことの重要性はすでに常識化した印象がありますが、ここで印象的だったのがミゲルさんの以下の言葉です

6〜12歳の子どもは、神経系だけでなく、価値観や道徳心というものもこの時期に身につけたものを生涯に渡り持ち続ける

だからこそ、この時期に正しい事を教えなければならないのだという話ですね。

■子どもには子どものルールを

大人は大人の見方で子どもを見てしまう。しかし、実際には大人には簡単でも子どもには難しい事がある。だから「子どもには子どものルールを適用しましょう」というのがミゲルさんの言葉です。

「ブラジル、スペインなどなどには4つの大きさのボールがある。そして一番小さいボールは弾まない。ボールコントロールしやすくなるから。だからといって空気を抜いたらダメ。適切なボールを用意しましょう」

子どもには、適切なコートのサイズとボールとルールが必要」であると。


■インテグラル(組み込まれた)・トレーニング

スペインでは、20年くらい前からインテグラル(integral・組み込まれた)・トレーニングという理論に基づいた指導が行われているそうです。この中に、フットボール用トレーニングメソッドもあり、それを追求してきたとのこと。
4500万人の国で、サッカー、バスケ、水球、ホッケーなどなどで世界王者になったと。その肝になるのはこのインテグラル・トレーニングであると。

そしてそれは「ゲームの流れを読み取って考えさせるトレーニングメソッド」であると。

そして良い練習メニューとは

テクニック、戦術、フィジカル、認知力、そして決断に対する自由や責任、高い集中力を必要とする練習を、それを指導するチームの監督が推し進めるシステムや攻撃、守備の考えにマッチさせて行うもの

であると言います。

そして「技術だけ、フィジカルだけ、という具合に何か1つを抜き出して練習させるメニューはダメ」だと言います。

例として「二人一組のパス練習は技術的な練習になる」としつつも戦術的な視点やフィジカルを上げることはできないと言います。

だから練習メニューは試合の中の一部分を切り取ったものになるようなイメージだと言います。そしてそうした練習メニューを考えなければならない立場であるという点をもって「育成年代のコーチこそ、有能でなければならない」と断言します。

また、「バルセロナでは、フランシスコ・セイルーロさんというコーチがこうした考えをベースにした練習メニューを作り、それがDNAになった」と。

できるだけ混合した練習がいいのだが、ただ、混合した練習に進むための技術的な基礎練習については全否定するわけではなく、その割合についても「難しい問題だ」と話していました。


・育成年代の練習の中に組み込まれるべき要素と、その割合の一例。


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                           6〜9歳               10〜11歳
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技術     |65%               |
戦術     |5%(例えば攻守の概念だけでもOK)|
フィジカル  |パワー系は不要。バランスはOK   |
決断     |10%               |
注意、集中  |10%               |
認知力(視野)|10%               |


これは何かの要素を抜き出してそこだけやる訳ではないという点で、モウリーニョ監督が採用するピリオダイゼーションという概念にも近い。また、風間監督が今季から始めた練習のスタイルとも似てます。

■トレーニングステップ

1 アナリティックトレーニング テクニックだけ
2 グローバルトレーニング DFなど相手をつける
3 インテグラル・トレーニング 
4 インテグラル・トレーニングだけど、戦術に則った練習
5 リアルな試合

■動画

フットサルとサッカーのプレー映像を見比べて、フットサルで使っているテクニックが実際のフルコートのサッカーでも使えるのだという事を説明していました。

CWCの柏戦におけるネイマールのゴールなども例として取り上げていました。ネイマールはフットサル出身者です。というか、世界的に見ればプロサッカー選手に対するフットサル出身者という説明の仕方は適切ではないのかもしれません。別段、珍しいことではないからです。


■質疑応答

質疑応答では、お一人聴覚障害者のサッカー指導者さんの質問が興味深かったです。
機会があればミゲルさん自ら指導に伺いたいと述べる一方で、次のような練習があるのだと話していました。

練習によっては、音を使ったコミュニケーションを禁じます。使えるのはジェスチャーだけです。そうするとどうなるか。周りを見なければならないので、顔が上がる。そして、他の選手がプレーの前後に行う些細な癖を見ようと洞察力が磨かれる。判断力も上がります

なるほどと思いました。

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ということで、取り留めもなく書き連ねましたが、フットサルを育成年代の練習に取り入れることの効果やその際の方法論などに関する講義でした。

この講義を通し、ミゲルさんの日本サッカーへの思いはもちろん、子どもたちを適切なメソッドで教えることの重要性を理解出来ました。また、そうすることで、子どもたちの可能性をより大きく伸ばせるのだろうとも思いました。

また、こうした講義を開設するJFAの先見性も素晴らしいですね。巡り巡れば、それは子どもたちのためになるわけです。








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