川崎フットボールアディクト創刊のお知らせ

ご存知の方も多いかとは思いますが、JsGOALが1月末をもって更新を終了し、新サイトの方に統合される事となりました。
Jリーグの取材情報を記事として公開する場として、本当にお世話になってきました。

JsGOALには感謝の気持ちしか無いのですが、そのJsGOALもホームゲームのみの取り扱いということで情報の半分は出せないという状況があったため前から川崎フロンターレ専用のニュースサイトを立ち上げようとは考えていました。

今回、いろんなタイミングが一致して、Webマガジンという形で、サイトを立ち上げる事になりました。声をかけていただき、クラブ側にも理解していただき了解をもらえました。掛け持ちもOKだと言われていたJsGOALの統合による運用の停止は想定外でしたが、そんな動きの中でできたのが川崎フットボールアディクトというサイトになります。


明らかな采配ミスにより劣勢に追い込まれた大分高校は、その劣勢を挽回して逆転。国立競技場への切符を手にした。勝利の秘密は、朴英雄監督が「ホントに大東亜戦争の時の特攻隊よりも気持ちが強い子で、典型的な素晴らしい日本人の子なので、絶対に何とかしてくれると思っていました」と話す上野尊光を筆頭とする、大分高校の選手たちの勝利への強い気持ちと、それを支えた精神力にあった。


通常であれば文句のつけようのない完璧な負け試合である。それも采配に起因する敗戦である。

采配への疑問は試合前から始まっていた。「今大会もう難しいのでは」と話していたNo13岡部啓生の名前が先発のメンバー表に記載されている時点で、知り合いの記者と顔を見合わせざるを得なかったのである。

さらに試合開始直後の混乱を突かれ、試合開始から15分も経たずに2失点。失点のきっかけを作ってしまったNo23の藤澤拓を17分に交代すると、その直後の20分ごろにアンカーのNo10上野尊光が足首を捻り、激痛に顔を歪めながらベンチ脇で治療を受ける。朴英雄監督の視野には上野の治療の様子は入っていたはず。しかし、メディカルスタッフに彼の状態を尋ねること無く、21分に2枚目のカードを切るのである。ベンチに下がったのは、ケガをおして先発していた岡部だった。

岡部の交代について朴監督は秘密兵器とも言えるNo21牧寛貴をできるだけ終盤に使いたかったからだと話すが、その一方で岡部が20分ほどしか持たない事を認識していたという。交代カードを1枚消費することが明らかな状況があり実際にそうなった。つまり岡部は、セオリーで言えば先発で使うべきではなかった。しかし、朴監督はそのセオリーを破る。その結果として大分高校(分高=イタコウ)が背負ったのは明らかに厳しい戦況だった。

分高は、前半の21分までに2点を失い、交代カードを2枚使い、そして中盤の肝ともいえるアンカーの上野が足首に重篤なケガを負うのである。

これだけの悪条件のうち、少なくとも交代カード2枚の消費と、足をひきずる選手を使い続けなければならないという状況は監督の采配にその理由が求められた。だからこそ、この試合は采配ミスで負けるのだろうと覚悟を決めた。

しかしそこで分高の選手達は脅威の粘りを見せる。引きずる足が痛々しい上野は、そのままピッチに立ち続け、アンカーとしての仕事をやり通す。素晴らしい精神力を見せた上野について朴監督は「彼(上野尊光)はああ見えて、ホントに大東亜戦争の時の特攻隊よりも気持ちが強い子で、典型的な素晴らしい日本人の子なので、絶対に何とかしてくれると思っていました。私は韓国人ですがああいう日本の子供を見たら日本の将来はまだ明るいのかなと思ったりします。素晴らしいと思います、あの精神力は」と手放しで褒め称えた。

多くのものを失いながら失点を序盤の2点にとどめた大分は、前半終了間際の34分のNo17清家俊のヘディングシュートが決まり、息を吹き返す。

負けていれば確実に敗因となったはずの采配は、後半に入り勝因へと変わる。17分に交代出場したNo11小松立青が48分に同点ゴールをねじ込むと、その能力をできるだけ隠したかったという牧が交代出場からわずか4分後の79分に逆転ゴールを決める。前半21分には、腹立ちまぎれに敗戦を覚悟していたぼくは、朴監督の強運ぶりと選手たちの頑張りに頭を下げるしかなかった。

試合後の朴監督は、上野のケガを「私は今日、神が逃げたかと思いました」と話すが、牧のゴールを目の当たりにし「投入してすぐに決めてくれたので、今日は神が降りてますね。人間の力じゃ今日はダレが見ても難しいと思います。今日は神さまが私をかわいがってくれたと思います」と笑いを誘った。サッカーの神さまはずいぶん忙しいものだ。

分高のこの勝負強さはなんなのだろうかと考えたが、結局のところ0−2になった時に選手たちが冷静に目の前の状況に対処したということなのだろうと思う。そういえば、大分の恩人が「分高の生徒は日頃から監督にガミガミ言われている分、相手の事は頓着しない精神力がある」のだと話していた。どんなに強い相手でも、相手を呑む気持ちの強さがあるのだという。

高校選手権を取材してきた中で、色々な高校があるものだと毎回思わされてきた。ミックスゾーンでひとしきり話した後、監督自らが「報道の皆さん、話を聞きたい選手が居ますか?」とオーダーをとってくれるチームがある一方、トレーナーと思しき関係者が、ミックスゾーンに入ったばかりの選手たちを「もうバスを出すので」と急き立てるように連れ出す高校もあった。どちらの高校も優勝することはなかったが、であるならばどちらの高校の生徒が人間としての厚みを増すのかは自明であろう。

大分高校は、長時間ミックスゾーンでの話を許している。選手たちも高いコミュニケーション能力を持っており、会話が成立している。試合後の10分、20分の立ち話は、もしかしたらコンディション回復において不利に働くのかもしれない。しかし、プロの選手達が試合後の報道陣とのやりとりはもちろん、毎日の練習後にもファンサービスや取材を受けつつ、プロとしてのパフォーマンスを維持している姿を見ると、高校生を過度に保護する必要はないのではないかと思う。

精神面での強さとは、過保護な環境では身につかない。もちろん、だからといって西宮が過保護だとは言わない。西宮の大路照彦監督は開明的な姿勢で選手と接し、いい関係を築いていた。西宮の選手がミックスゾーンで対応していたその姿を見れば、しっかりとした指導を受けているのははっきりと分かる。ただ、大分が精神的に強すぎたのである。

あらゆる面で優位に立っていたはずの西宮は、その優位性を後半48分に失った瞬間に、精神的に追い込まれてしまっていた。まだ試合が振り出しに戻っただけだと開き直る強さが、なかったのだろう。サッカーは技術や戦術が大事である。しかし、そこに勝利を欲する強い精神力が加わらなければ勝ち進むことはできない。

明らかな劣勢を跳ね返し、世紀の逆転劇を見せた大分高校の戦いを見せつけられ、改めて精神力の大事さを痛感した。そしてそれを鍛えることの難しさに思い悩んでいる。



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