川崎フットボールアディクト創刊のお知らせ

ご存知の方も多いかとは思いますが、JsGOALが1月末をもって更新を終了し、新サイトの方に統合される事となりました。
Jリーグの取材情報を記事として公開する場として、本当にお世話になってきました。

JsGOALには感謝の気持ちしか無いのですが、そのJsGOALもホームゲームのみの取り扱いということで情報の半分は出せないという状況があったため前から川崎フロンターレ専用のニュースサイトを立ち上げようとは考えていました。

今回、いろんなタイミングが一致して、Webマガジンという形で、サイトを立ち上げる事になりました。声をかけていただき、クラブ側にも理解していただき了解をもらえました。掛け持ちもOKだと言われていたJsGOALの統合による運用の停止は想定外でしたが、そんな動きの中でできたのが川崎フットボールアディクトというサイトになります。




 もともと佐藤隆治主審は笛が多い人だとは思っていたが、それにしてもこの試合は立ち上がりから気になった。確かに一つ一つを見ればファールなのだろうが、それを吹く意味があるのかと疑問に思わざるをえないものも少なくなかった。そんな判定にイライラしてしまっていた事もあり、メモしたファールコールが1つあった。それが前半17分のもの。マイボールにしている京都の加藤弘堅に対し、小野裕二が激しく体を押してなんとかボールを奪い返そうとした場面である。



 きっちり見れば、それはファールなのだろう。しかし、小野の必死の努力も実らず加藤は全く動じずにマイボールをキープし続けた。同じプレーをアジアやヨーロッパの主審に吹かせた時、果たして加藤はファールをもらえたのだろうかと思ってしまった。

 ACLで日本が勝てなくなって久しいが、振り返ってみると浦和、G大阪とアジアを連覇したのは、06年のW杯ドイツ大会での日本代表があまりにひ弱で、それを改善すべく国内の笛の判定が変わった(と書くと審判委員会からクレームが来るが、ここは便宜上わかりやすくするためにあえてそう書きます)あとから。

 そしてこの準決勝を吹いた佐藤主審が、あの判定基準でこの大一番を吹くことができているという状況に国内選手の弱体化の萌芽を感じてしまうのだが、論理が飛躍しすぎだろうか。まあ、この原稿は審判を批判するために書いているものではないので、この件についてはココらへんでやめておこう。

 いや、佐藤主審の笛でここまで引っ張ってきたのは、彼の笛が試合展開に大きく影響を及ぼしていたからである。試合後の会見で大木武監督は次のような質問を受けている。それはすなわち、前半の途中からペースをつかめたことについての質問である。

「何が問題だったかというと、すぐにFKになるんです。取りに行ったらすぐにファールすぐにファール。30分くらいからですね、落ち着いたのは。でも、点は取れませんでしたが。ハーフタイムにはそれを言いました。やっと落ち着いたねと」

 右サイドバックで先発し、試合終盤には3バックのCBとしてカバーリングに走りまわった安藤淳もファールの多さを感じていたと話しており、それが京都のサッカーに影響を及ぼしていたという。

 頻繁に試合が止まる展開で良さを出せなかった京都が、試合が流れるようになってペースを掴んでいたという事実が、大木武監督が作り上げてきたチームの本質を物語っているように思う。そして38分に決定的なチャンスを、クロスバーとポストとを含めて3度防がれ、その1分後にはドゥトラの至近距離からのヘディングシュートがGK飯倉大樹にはじき出される。素晴らしい試合展開に、誰もが京都の得点の予感を現実感を持って感じている中、先制点は横浜FMにもたらされる。

 この試合、立ち上がりから中村俊輔は後ろ向きでボールを持ち、キープしようと試みて、マイボールをロストする場面ばかりが続いていた。この試合は中村の試合ではないのだろうと思っていたが、42分のこの場面はさすがだった。前を向いた中村から正確なパスが渡邉千真に通る。渡邉にチャレンジしたDFは後追いの守備を強いられ、簡単に体を投げ出した。そして生まれたGKとの1対1を渡邉は簡単に決めるのである。DFとGKとの連携不足が一因なのだろうが、それにしても試合展開とは無関係な、あまりに理不尽な先制点は、サッカーの怖さを物語るに十分なものだった。

 心が折れていたおかしくはない京都のハーフタイムのロッカールームが気になったが、大木監督に聞いても、選手に聞いても、押していた前半の、終了間際の失点について特別何かを話してくれることはなかった。それくらいに平静に、失点を消化し、後半に臨めていたのであろう。

 推進力を失うことのなかった京都は、後半開始早々の50分に同点ゴールを手にする。宮吉拓実のゴール前を横切るフリーランニングによって、わずかな空間を与えられた工藤浩平のシュートがゴールネットを揺らすのである。

 1−1となった試合はこのあと、膠着の度合いを深める。そしてそんな展開だからこそ、セットプレーがその存在感を増す。72分。京都がいいチェイスを見せてボールを奪うと、パスを受けたドゥトラがもらったFKを、そのドゥトラが直接ねじ込むのである。

 横浜FMを京都が逆転するというまさかの展開にどよめく国立競技場は、試合終盤の横浜FMのパワープレーによってさらにその興奮の度合を高める。90+5分に、中村からのファークロスが渡邉に入り、この落としを中澤佑二がミドルシュート。水谷雄一が一度はこれを弾きだすが、大黒将志がゴールに叩きこむ。

 勝利をほぼ手中にしていた京都はこの失点により決勝進出の権利を保留させられる事となる。ピッチ上で戦っていた選手たちはもちろん落胆の表情を見せる。87分に、試合を終わらせるべくピッチに投入されていた駒井善成はその時の事をこう振り返っている。

「(自分がそうだったこともあり)ベンチに戻った時、みんなが落ち込んでいるのかなと思いました」

 しかし、京都ベンチは笑顔だった。笑顔で、選手たちを迎え入れるのである。

「(ただ)控え選手だったりスタッフだったりが笑顔で待っていてくれました。いい雰囲気を作っていてくれました」

 安藤はその時のベンチの反応に救われた一人。「『このまま終わったらおもんないやろう』という声に笑わせてもらいました」

 笑顔によって落ち着きを取り戻した選手たちに、大木監督はこんな言葉を投げかけたのだという。

「一番最初に言ったのは、これはフェアだと。内野にまず、『お前、ハンドだ』と(会場内笑・エリア内で胸でGKにボールを返そうとして手に当ててしまっていたプレーが流されていた。だから、失点はフェアなのだということ)」

 そして、その言葉に続き「『慌てるな』と。あの失点は仕方がない。じゃあ、いいじゃないか。90分で終わるのはもったいないぞと。あと30分やればいいじゃないかと。何の問題も無いという話をしました」と続けたのだという。そして「そんな簡単に勝てるとは思いません」と口にしつつ「選手にはそれ(勝つ)だけのタフさがあったのかなと、感心ではないですけど、確信はしました」と言葉をつなげた。

 イケイケの横浜FMに対し、もう一度前を向き直した京都。そしてこの両者の勝敗を分けたのが、ベンチワークだった。

 後半72分に逆転を許していた横浜FMは73分の小野から松本怜への交代采配を皮切りに、82分、86分とカードを切っていた。つまり、彼らが打てる手は、フォーメーションチェンジのみだったのである。それに対し、1枚を残していた大木監督は104分にドゥトラに代えて、久保裕也を投入し勝負をかけるのである。

「ドゥトラの方が点をとれるのでは?」と考えた方もおられるかと思うが、その点について大木監督は「2−1でリードしていたら代えようとは思いませんでした。なぜかと言えば、彼はボールを運べます。30m陣地を挽回できます。ただ、その後が続かない。それが一つの問題だったですね」

 しかし、試合は土壇場に追いつかれ2−2となっている。PK戦に持ち込むのも1つの方法ではあるのだが、それでは不確定な要素が多すぎる。であるならば、延長の30分のうちに試合を決めてしまいたい。そしてその考えを実現化する選手として、高校生の18歳久保が登場する。

「2−2にされて、点を取らなければならない。ドゥトラはかき回すことはできるんですけど、そこから点になるかどうかというのは…、割とパーセンテージ低いですね、今年一年見ていて。そこは数段久保の方が高いですね」

 そしてその久保が決勝ゴールを決めるのだから大木采配は見事である。ちなみにゴールについて久保本人は「感覚です。あまり覚えていません」と述べている。変に考えすぎると1対1は難しくなるもの。それくらい力が抜けていたほうが逆にいいのだろう。

 京都は、116分の久保のゴールに続き、120分にも久保のアシストで駒井がダメ押しとなる4点目を決めて横浜FMを押し切り、決勝進出の切符を手にした。

 この結果、決勝は史上始めての2部リーグ所属チーム同士の対戦となった。今季のJ1での柏の大活躍はもちろん、京都や同じく決勝進出を決めたFC東京といったJ2のチームの躍進は見事である。そして、そうした状況が現出する現在のJリーグについてそれだけで1本原稿が書けてしまう題材であるという事も事実であろう。

 さて、岡田武史監督が南アで戦った日本代表で、コーチを務めていた両監督が対決する元旦の決勝戦はどのようなものになるのか。非常に楽しみである。




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